東京高等裁判所 平成元年(行ス)4号 決定
本件訴えは、地方自治法二四二条の二第一項四号の規定に基づき原告が千葉県の天皇個人に対する不当利得返還請求権を代位行使するものであるところ、原審は、法は天皇が民事裁判の当事者となることを予定していないものであるとの理由により、本件訴状を却下した。しかしながら、民事訴訟法上、訴状の却下は、訴状に当事者、法定代理人、請求の趣旨若しくは原因の記載を欠く場合、訴え提起の手数料を納付しない場合又は訴状の送達をすることができない場合にすべきものとされているところ、原命令における訴状却下の理由は必ずしも明らかではないが、少なくとも明示的には右事由のいずれにも当たらないものとみるほかはなく、これを、天皇の法的地位に基づき、本件訴状の送達が不可能であることを意味するものと解する余地があるとしても、右の法的地位が直ちに訴状の送達を不可能とするものとはいい難い。仮に天皇の法的地位及び本件請求の内容に照らし、右請求を不適法とすべき事由があるとしても、右は訴えを却下すべき事由に該当するものであって、これを訴状却下の根拠とすることはできない。
(丹野 加茂 新城)